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「プラウド南麻布」残存期間60年の考察

2012/08/03

定期借地権は、1992年借地借家法の改正によって生まれた制度である。借地権者に有利といわれる従来の借地借家法に対抗して、借地期間を明確に定めたうえで、更新が不可能な方法を確立した。地主と借地権者が対等な借地概念を定めることがその最大の目的だった。

定期借地権には、3種類のタイプが存在する。30年以上経過した時点で、地主が建物を買い取ることをあらかじめ約束する「建物譲渡特約付借地権」。借地期間を10年以上50年未満とする「事業用定期借地権」、これは住宅用途に使うことはできない。3つ目が「一般定期借地権」である。50年以上の期限を定め、期間満了時には原則建物を取り壊して土地を返す。分譲マンションが対象となるのは、この「一般定期借地権」である。

「定期借地権付きマンション」の第一号は1995年に藤和不動産(現・三菱地所レジデンス)が分譲した「藤和田園調布ホームズ」。したがって、分譲マンションにおける定期借地権の歴史は、まだ17年が経ったばかり。期間が満了し、契約通り返却が実行されるには、あと30年以上を要する。マンションセミナーや見学同行で「実際に50年経ったら、壊さずに使い続けるほうが現実的ではないのですか?」と質問を受けることが少なくないが、それでは定期借地権を作った意味がない。だから「契約通り、建物は壊して土地を返却すると解釈するのが妥当」と説明するようにしている。

定期借地権付きマンションは、地価の動向や経済情勢の影響を受けながらも、ある時期までは安定して供給がなされ、確実に市場に受け入れられてきた。「広い家が手に入る」「利便性の良い場所に住める」「初期コストが所有権にくらべ安く済む」と明らかな利点が確認できたからである。しかし、2006年頃から都市部の不動産を中心に、ファンドが買いに走ったおかげで、地価が上昇に転じ、異変が生じた。利便性の高い土地、希少性のある土地ほど売り払わずに、定期借地権に切り替えはじめから。当然、そのような都心の好立地では、定借といえど価格が高くなる。

一方、リーマンショック後も、都心部の相場は底固く、逆に確かな需要が証明された格好となった。定期借地権であろうとなかろうと、立地評価の高い物件は着実に売れている。しかし、ファンドバブル時に価格設定をした物件は、定借マンションの魅力のひとつである「安さ」が実感できないためか、竣工後も買い手がつかないまま借地の存続期間が徐々に短くなっていっているケースも見受けられる。

さらに、高級マンションは目の肥えた顧客層が納得するようなグレードを用意しなければならないのだが、それが逆に「“かならず解体する”こととの矛盾」に発展してしまうケースもある。「どうせ50年で壊すわけでしょ」となるのだ。長期優良住宅法が2009年に制定されたが、これも50年で解体することは「時代の逆をいく」印象を与えかねない。

だが、そこにきて新たな流れもある。存続期間70年(「パークコート神楽坂」など)や、解体を契約に盛り込まない定借マンション(「パークハウス葉山翠邸」)の登場だ。30代の世帯も安心して永住できるだろう、と「パークコート神楽坂」は決して安くない価格だったにもかかわらず、売れ行きの良さは業界でも話題になった。「パークハウス葉山翠邸」は葉山マリーナの目の前で、著名建築家を登用し、僅か22戸と小規模だが、豪華な建物に仕上げ、50年程度では壊さないことを地主との契約に盛り込んだ。

さて、タイトルにある物件に話を。法の背景と時代の経緯を長々と説明したのは、『プラウド南麻布』の「存続期間60年」と「解体しない」2つの条件を物件評価の対象にすべきだと考えたから。60という数字は、「70年にできなかった」のではなく、「60年が理想」という声が多かったかららしい。たしかに、あまりに長ければ「所有権と限りなく近い」と捉えられるかも知れない。解体しないことについては、良質な建物をたてるわけだから返還後も住宅として活用してほしいと地主に要請したようだ。

レインズデータの集計で、3Aにある中古マンションの取引事例を「築年数と坪単価を軸」にプロットすると、おおむね@400前後で分譲され、45年で@200前後のレンジに集まっていることがわかった。要するに、50年程度でだいたい半値になっているのである。しかし、そのゾーンの上を行く物件が稀にある。「広尾ガーデンヒルズ」や「六本木ヒルズレジデンス」などだ。資産価値とは地域ではなく(もちろん人気エリア内であることが大前提ではあるが)、あくまで「個別性」が重要。不動産は結局のところ、「ピンポイントの魅力」に尽きる。

では、定借マンションはどんな考え方で検討すればよいのだろうか。ここまで述べたように「50年で半値程度」「別格物件は高値を維持」この2つの事実を元に、合理性を試算するのが手っ取り早い。ローンを使うなら金利の比較計算を忘れずに。また、残存期間10~20年になれば、貸すことも方法論のひとつに加えるのが賢明だろう。「50年で半分の価値が残る」について、今後の日本を考えると通用しないのでは?と思われる方は、自分なりの悲観論を展開してシュミレーションするといいだろう。何事も印象ではなく、具体的にシミュレーションすることが肝心だ。

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