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老朽化マンションへ「合意形成」の留意点を公開

マンションの建て替えが実現するには、結構な時間がかかる――そんな印象を持つ人も多いだろう。例えば、日本初の鉄筋コンクリート造集合住宅として知られる「同潤会青山アパートメント」は1927年築。はじめて建て替え問題が浮上したのは竣工から41年経った1968年のとき。紆余曲折を経て、建て替えのために建物が取り壊されたのは2003年。じつに築76年であった。最初の思い立ちから着手まで、35年もの歳月を費やしている。

「同潤会青山アパートメント」跡地の「表参道ヒルズ」

日本初、建替え円滑化法適用「アトラス諏訪町レジデンス」

本日の記者発表会の様子(向田慎二所長)

バブル景気をはさむなど特異な事情が重なったことは想像できるが、5年10年の話し合いは当たり前だろう、くらいのイメージがある。しかし、旭化成不動産レジデンスの実例では、アドバイザーとして参画し、合意形成に至るまでの期間は、ほとんどのプロジェクトが1年~2年以内。もちろん、関与する前から組合内で議論がはじまってはいたのだろうが。

「はじめの話し合いでのちょっとしたボタンのかけ違いが、無用な遠回りになってしまうケースが多い」と語るのは、同社のマンション建て替え研究所長向田慎二氏。老朽化問題を抱えるマンションの多くは、この「合意形成」の段階で議論が頓挫したり、話し合いが中断してしまっていることがほとんどだという。さらに、その状況を紐解いていくと、ネックとなっている事柄はいくつかのパターンに分類されるようだ。

まずひとつは、「法の認識」である。建て替えには区分所有法で5分の4の同意を得る必要があるとしているが、全員同意の上ですすめるべきとする考えと、法をクリアすれば少数意見に耳は貸す必要ないとの考えのどちらかに大きく振れる傾向があるという。「現実的には全員合意に向けて説得をし尽くした上で、それでも数名の反対が残った場合は強行もやむ無しという決断が現実には必要」(同研究所の大木主任研究員)。

ふたつめは、管理組合内の合意形成に向けての実務をコンサルタントに投げてしまうケースである。「プロに任せておけばよい」と言うのは、管理業務そのものにおいてもありがちな傾向だが、主体はあくまで管理組合または建て替え推進委員会でなければならない。

さらに、似たような理由であるが、理事会だけでことを進めたり、借家人を関係ないものとして合意に向けての説明を怠るようなことも、良い方向に導かないとしている。また、「高齢者が多ければ、意見がまとまるのは難しい」「耐震診断をすれば資産価値が下がる」「還元率が100%でなければ合意は得られない」「不景気なときは検討しないほうがいい」といった、実証されてはいない先入観が邪魔をするケースも意外にあるそうだ。

そこで同社では、これまで建て替え決議に至った15のプロジェクトの実例をもとに「合意形成活動レポート~失敗の原因と成功への鍵~」と題した冊子を500部作成。インターネットなどで問い合わせてきた管理組合などに配る。内容は今後毎年刷新していく予定。

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