住宅ブランドの実際

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ブランド 経営者の思い

「伝統は革新のシグマである」

2012/01/31

1990年代まで、三菱地所のイメージは“丸の内”そのものであった。住宅メディアとして社長にインタビューをしても、「住宅のことはあまりよくわかってないんだよ」とはじめに釘をさされ、拍子抜けした思いもある。外からみた印象だけでなく、内側をのぞいてみても三菱地所という企業は「丸の内の大家」なのだった。

担当になり、最初に訪問したのが「マンション市況報告」の場。1996年のことだ。前の丸ビルの、50名は収容できそうな会議室に参加人数が、たった3,4人。レポートをひと通りなぞったあと質問を受ける。日本を代表する財閥の関心事は何だろう。たいてい市況の話題の後できかれることといえば、個別物件の売れ行きか値付けがらみだが、実際のそれはまったく予想外のものだった。

「フローリングが普及しているが、音の問題は解決したのか」。質問は市場ではすでに標準化された内装材のこと。これには正直驚いた。資金回収のスピードが成否を分ける事業なのに。床材ひとつに、どれだけ時間をかけて議論しているのだろうか。「リビングのカーペットはもう顧客に受け入れらない」と販売の実態を返したが、まったく腑に落ちない様子。他社には当たり前でも、たとえ売れ行きに悪影響を与えても、品質に疑問があるものは使わない。「石橋を叩いても渡らない会社」と聞いたのはそのずっと後のことだが、初対面でそのDNAに触れることができたわけだ。

それから4,5年ののち聞いた言葉が表題のもの。発したのは高木茂前社長。住宅品質確保促進法がスタートした2000年、取材の冒頭「世間から、地所といえば伝統のある会社だと思われています」と切り出した際に返ってきた開口一番のセリフがこれである。シグマは「総和」。つまり革新し続けなければ伝統は続かないということ。この年、同社は日本で三本の指に入る設計事務所(三菱地所・建築設計事務所)を分社化する。

住宅事業も大きく体制を変えた。大規模物件以外の設計を社外にも出すようになったのだ。それを機に、設計会社や施工会社によって品質が変わらぬよう標準の設計仕様をシステム化し、同時に購入者にもわかりやすいドキュメントとして発行。独自の設計性能評価書「チェックアイズ」である。新しい試みもすぐに追いつかれる業界にあって、どこも真似できない品質開示システムの誕生だった。2002年9月、新しい丸ビルの竣工によって丸の内の景観と人の流れがかわっていったが、三菱地所のマンション「パークハウス」はそれに先行する形で「技術力」を販売のバリューチェーンに組み込んだ。フローリングの性能に最後まで合格を出さなかった集団は、競合他社の追随を許さないしくみを構築したのである。

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