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経営者の思い

「データほどあてにならないものはない」

マンションの市場データといえば、不動産経済研究所や東京カンテイがメジャーである。持家がもたらす経済の波及効果が景気浮揚につながることから、不動産経済研究所が毎月発表する「首都圏の新築マンション初月契約率」は景況を探る指標に、また昨今の資産価値に対する意識の高まりから東京カンテイの「マンションPER」は資産性をはかる手掛かりになっている。

リクルートにいたとき、デベロッパーの要求もあって、実態により近い市場動向を市況報告書として担当部署がまとめ、それを営業が持ってまわった。現場や経営者向けに情報提供サービスをしていたのである。「データほどあてにならないものはない」という経営者は多い。どの世界もそうだろうが、不動産業界はひときわそう言う社長が少なくないように思う。野村不動産元社長の中野淳一氏もそのなかのひとりだ、が他の社長陣と違っていたのは、そういいながらもすべてのデータが頭の中に入っていたことだ。そして彼の市場の捉え方はかなり独特だった。

持参する報告書の前半はデータ集になっていたが、割愛させず合いの手を入れながら聞く。発表者がリラックスできるムードを作っていたのだろう。そして、ひと通り説明が終わると、こう切り出す。「さて、本題に入ろうか」。かれこれ1時間以上経った後だ。君たち現場の人間が社員と接触していて、物件の現場をまわっていて、おかしいと感じたことを全部話してくれというのである。どんな細かなことでもいい、と。

当時、野村の現場は即日完売続き。マイナス要素を指摘するのは、あらさがしのような気分だった。でも、社長のなんでも言ってくれという気迫はすごかった。本音を話すまで帰さないといわんばかりだった。君らの持ってくるデータはわかっている、今度は俺の番だという場の雰囲気に毎回のみこまれた。ここで何も言わないともうこの社長室には出入りできないと感じたくらいだ。そして、社長は現場のどんな細かなことにも精通していた。こんなこといっても知らないだろうと思って話してみてもぜんぶ通じた。だから、よけいに緊張した記憶がある。

 

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